この南ア訪問は、JETRO(日本貿易振興機構)とWOSA(Wine Of South Africa)の協力により実現したもので、2004年1月18日〜28日の期間、ステレンボッシュやケープタウンを舞台に展開されました。先立って、2003年8月にはステレンボッシュ大学コブス・ハンター教授が、
1.南アワインのプロモーション
2.日本での葡萄栽培技術のアドバイス
の2点を目的として来日し、当クラブとも交流を深めた実績があり、これを受けての、更なる交流促進のための訪問となったのです。

 訪問の期間中には、
1.日本の輸入高第7位を占める南アワインの日本市場への更なるプロモーションに役立てていただこうと、当クラブ6名から南アワインメーカーへの、日本でのワイン市場や食文化の説明
2.LNR-Nietvoorbij所属のコブス・ハンター教授や主要ワインメーカーによる、葡萄栽培技術を中心とした詳細なアドバイスや研究成果の開示
がありました。

 訪問は、JETRO南ア所長の永田氏や通訳の石井もと子さんの協力を得たお陰で、大変有意義なものとなり、また、継続事業としてコブス・ハンター教授による葡萄栽培技術のアドバイスが行われることとなりました。2004年夏には教授の再来日が実現しています。

 

ハンター教授(奥右側)は“キャノピーマネージメント(葉の受光管理)”の重要性を説き、1新梢の長さ(1.2m〜1.4m)、枚数(16〜20枚)、一様な太さ(0.7cm程)、成熟葉と若葉の比(1:0.7)や房周りの適度な除葉などの管理についての詳説もありました。




 クローンや土壌の差によるワインの品質の差を比較する場面。Nietvoorbijではこうした小仕込みを行う設備も整っています。



 葡萄園を開設する際には、土壌分析(土壌中成分、土壌構造)を予め行う必要があり、欠乏成分の補充、1.4mまでの深耕・土壌層ごとの均一化が重要です。

 深耕が不十分だと、土壌はコンパクトになり、根の生長や水はけを妨げ、悪影響を及ぼします。

 ←土壌を掘り起こした様子




 斜面での葡萄栽培は、雨水や過剰な養分の流出、採光でのメリットや風通しが得られ、醸造専用品種に適していると言えます。
 



De Traffordワイナリーで実際に使われている圧搾機!以前は日本でも小型の縦型圧搾機を使用していましたが、今は横型・空圧型・回転式の圧搾機に替わっています。

 このワイナリーでは、シュナン・ブラン種を使用した上質なワイン造りが行われていました。年生産量3,000c/s。



 南アのワインメーカーが試飲ワインも持ち寄り、当クラブ6名にアドバイスを求めた場面。

 南アワインは概して品質向上が目覚しいのですが、マーケットの拡大には、輸出先の市場調査やワインメーカーによるアドバイスが不可欠です。
 


葡萄樹の成長点を培養したものを、更に成長点培養することにより、ウィルスフリーの苗を作ることが出来ます。このnursery(苗木屋)は40haの圃場で1,200,000本余りを生産し、南アで生産される苗木の80%を占めています。
 


Rupert & Rothshildは、ロスチャイルド家との合弁企業。フランスタイプのワイン造りが特徴的。→のカベルネ・ソーヴィニョン畑では、樹勢や土壌特性に応じて、樹間や収量を調整していました。葉への採光も適度で、果粒は小さく、バラッとした房がある状態は、理想的な生育環境といえます。
 


Bellevueは、南ア特有の品種を大事にするワイナリーで、ピノタージュ(ピノ・ノワールとサンソーの交配種)、マルベックやシラーズを中心にした栽培を継続中。1953年のピノタージュ株も残っている圃場では、ブッシュヴァイン仕立てが今でも使用され、ミネラル感や厚みの感じられるワインを生み出しています。


 Lourensfordワイナリーでは、500ha余りの圃場を7名の担当者に割り当てるなど、300名(臨時員を含めると1,200名)の従業員が栽培や醸造に携わっていました。→の移動式小型タンクはワインを傷める原因になるポンプを使用せず、重力によってワインを移動させるシステムで、巨大タンクから流れ落ちたワインを貯め受け、クレーンで上に持ち上げられ、別の巨大タンクにワインを流し込む仕組みとなっています。



 ニール・エリスワイナリーのオーナーハンスさん(奥さんは日本人)は、日本での生活を経て南アで大規模なワイン造りを始めた人。日本での知名度は最も高く、南アでもトップクラスワイナリー。ディナーに招待された席では、当クラブ6名が持ち込んだ甲州種ワインとの比較試飲も行われ、交歓パーティにより交流を深めました。